伸縮小説の書き方 ~「嘘吐きのピアノソナタ」を例に~

伸縮小説なんてのを書いてまして。
100・400・800・2000文字でそれぞれ同じ話を書く、ってやつなんですけど。

「私も書いてみたい!」とか「どうやって書くんだろう?」とかの声を見たりしたのですごい!って言われたくて手の内を明かすの巻。

例として、テキレボ公式アンソロに投稿した「嘘吐きのピアノソナタ」を書いた手順をざっくり書いていきますね。

なお完成品はテキレボサイトで読めます。
テキレボサイトのリンクが切れていたのでpixivに再録しました

1)まず思いついたキーワードから400文字を書く

アンソロのお題が「嘘」だったので、「嘘」から出発して「言わないことは嘘ではない」「無言の真実」「蔑まれる者」「赤」あたりのものが浮かんだんだったかな。

「赤」から真っ赤なドレスを思いついたので、主役(主人公とは思ってない)は真っ赤なドレスの女性。真っ赤なドレスなんてどこで着るん?→ピアノリサイタル

これをまず400文字以内で読める形にします。

2)400文字からエッセンスを取り出して100文字に

400文字で書いたものから、曖昧な表現とか詳細な描写とかをとにかく削って削って削っていきます。書きたかったものを頭に留めておくことを忘れずに。(削っちゃいけないところは削らない)

削ったものを順番入れ替えたり、表現を変えたりしながら「書きたかったもの」を際立たせるように形にします。象徴する一瞬のシーンが描ければいいのかなって思ってます。100文字以内に収まればひとまず出来上がり

3)400文字に描写を足して800文字に

400文字で書いたものはどうしても描写を簡略化しているので、足したいところに足したいように描写を加えていきます。

私自身がどうしても500文字小説ばかり書いているので、400文字だとちょっと足りなくて800文字だとちょっと多いな、という感覚なのですが、足せるだけ足したら800文字はとりあえず超えてくれるので、ちょっと超えさせてから読み直して描写過多だなと感じたところを削ります。800文字以内に収まったらひとまず出来上がり

4)800文字と100文字を繰り返し読んで、2000文字を書く

書いてきた100・400・800文字、どれもその事件(ピアノリサイタル)だけを書いています。背景も結末も、読み手にゆだねてしまっているので、ここを書いていきます。

赤いドレスの彼女の背景、なぜ嘘つきと呼ばれているのか、とか、ステージが終わると彼女はどうするのか、とかそういうあたりですね、書きこんでいくのは。

前述のとおり、私は普段500文字の枠で書いているので2000文字は長い!
なのでここがいつも難儀します。言葉が思い浮かばなかったらそれまでに書いてきた分(100・400・800)からコピペでポンして表現を変えたり、とかそんなこともやってます。

2000文字はだいたい2000文字くらいになったら終わり、というわけにはいかなくて、エッセンスである100文字、描写を加えた800文字と一緒に繰り返し読んで、書きたかったものからブレてないか確認します。ここがブレてたら失敗です。

5)100・400・800・2000文字を通して繰り返し読んで調整

まず第一に矛盾がないように。

100文字が際立つような書き方になっているか400・800・2000文字を修正。
400文字が要点になっているか100・800・2000文字を確認して修正。
800文字と2000文字は単品で読んで変な表現(国語的な意味)がないか確認。

6)並べてできあがり!

「嘘吐きのピアノソナタ」は『アイノマジナイ』という本の作中作でもあったので、各文字数にそれぞれタイトルをつけて完成です。

「もうすぐオトナの超短編」の選者を務めることになりました

超短編誕生から来年で20年らしいです。

ということで20周年記念として、さまざまな選者選による「20周年!もうすぐオトナの超短編」を募集、発表しています。
氷砂糖は今のところ、タカスギシンタロ選佳作、松本楽志選選外。峯岸可弥選発表はいつですか。

さてさて、私、氷砂糖も選者を務めることになりました。
自由題(内容・タイトル自由)」と「兼題(お伽話をテーマとした超短編・タイトル自由)」の2部門で、〆切は2018/02/04です。
応募方法他、詳しくはタカスギシンタロさんのブログのこの記事をどうぞ。

超短編とは「およそ500文字以内で綴られる、独特の読後感をもった文芸」のことで、ざっくりと雰囲気を説明すると「純文学っぽいことを500文字以内でやってしまう」的な感じです。

500文字のカウントの仕方もずいぶんアバウトで、人によってスペースをカウントしたりしなかったり、改行もカウントする人がいたり、1行20文字の枠で25行以内という数え方をする人もいます。そして、ちょっとくらいならオーバーしてもイインダヨ。

ちなみに氷砂糖が書く時のスタイルは「スペースはカウント」「改行はカウントしない」という条件下で「必ず500文字以内」です。

超短編のムーブメントの中心は、今のところ「超短編・500文字の心臓」という企画サイトでしょうか。私もわりと出没しています。次回のタイトル競作「水色の散歩道」にも投稿しています。

500文字の心臓では互選というシステムが採用されていて、投稿された作品が作者匿名で発表され、参加者は正選2つ(もしくは特選1つ)と逆選1つを評をつけて掲示板に投稿します(選評)。集計された正選票と逆選票の数で正選王と逆選王が決まり、両王様はその次の回のお題を設定します。
(選評、投稿者の方にはできるだけやってもらいたいんですよね。最近選評の少なさが気になって気になって、作品投稿してないときでも選評だしたりしてる)

私は自分の選評をブログにまとめているので、選者氷砂糖攻略の参考になさってはいかがでしょうか!

なお、氷砂糖選の選考手順ですが、集まった作品は作者名を伏せられて氷砂糖(選者)の元に届き、選評して取りまとめのタカスギシンタロさんがブログに結果をupします。結果がupされるまで選者は誰がどの作品を書いたのかわかりませんのでよろしくお願いします。

あと、近況などちょこちょこと。

ツイッターで見かけた#紙街02という企画に乗っかって、セブンイレブンのネットプリントで、「鉱物」をテーマにしたフリーペーパーを配信しています。

文字ばっかりです。 プリント予約番号は【NNLM8NGB】。配布期間は2017/11/26まで。 印刷設定画面で「両面印刷(短辺とじ)」を選択してください。 モノクロで40円です。お値段が違ったら設定を間違えていると思うので気を付けてください!(自分で試しにプリントしたとき間違えた)
「夜の林檎」という超短篇と、その超短編の制作工程、裏話が載っています。氷砂糖か氷砂糖の書く超短編に興味がある人は読んでみてくださいな。

あと、すっかり告知を忘れていたのですが、『架空レポ集 月のワインの試飲会』をKindle化しました。籠解放会名義です。99円でお読みいただけます。 →Amazon