歴史作家の谷津矢車先生とはツイッターでキャッキャウフフしてる仲なのですが、
なんでこんな関係になったのかは覚えていない……。
さておき。
谷津先生の新刊『おもちゃ絵芳藤』を読了いたしました。
「クリエイターを殺す本」と谷津先生はおっしゃられていましたし、
実際、読んでいてザクザク切りつけられはしたのですが、
読み終えたら良質なカタルシスが。
と、まあハードル上げ続けてもしょーがないとはおもうけれど
谷津先生なら笑って許してくれる。信じる。信じるって大事。
主人公の芳藤は幕末の絵師。
浮世絵師、歌川国芳の弟子です。
国芳が亡くなったところからお話は始まります。
私は中学から社会科捨ててた(担当教師が嫌いだった)のと、
未履修問題があった高校卒なので日本史の知識がほとんどないです。
なので、歴史小説ってどうも苦手意識があったのです。
というか今もあるんだけど、谷津先生の作品では、そこまでメジャーじゃない人物が主人公に据えられる事が多くて、前知識があんまりいらないので助かっています。
文体も軽妙だし。
(ただ、文体が軽妙なのは歴史小説好きな人から見るとマイナスポイントなのかもしれない)
というわけで、浮世絵の知識もほとんどない私ですが、
いやいや、楽しめました。
作中、藤芳は、絵師としての経歴は長いものの当たり作に恵まれず、
駆け出しの絵師がやる仕事であるところの「おもちゃ絵」をひたすら描いています。
弟弟子たちはどんどんと名を上げていくのに、
取り残されている、
という、まずここがクリエイターに切りつけポイント。
このポイントにビビビと来た人はぜひ読んでください。
そして、舞台は幕末から明治への過渡期。
変わっていく世の中で、
合せて変わっていく人々、変わることを拒む人々、変わることを強いられる人々。
ここは現代社会の写し鏡でしょう。
このポイントにビビビと来た人はぜひ読んでください。
あと、冒頭の国芳始め、いろんな原因で人は結構死にます。
人死にがどうしても苦手な方は敬遠してください。
それだと歴史小説読めないだろうけど。
不器用な生き方をした芳藤、その周りの人々。
いや、正直、谷津矢車作品では一番好きですね。
ちなみに「おもちゃ絵」というのは子供向けの絵のことで、
おもちゃとして遊ぶための絵だったり、戯画だったりのことらしいです(?)
巧く説明できている気がしない。
芳藤の描いた絵に関してはこんなツイートを見つけたので貼っておきます。
歌川芳藤は子供向けのおもちゃ絵を描くことが得意な絵師。歌川国芳の門人として、国芳が得意とした戯画をしっかりと継承した人物です。原宿の太田記念美術館で開催中の「浮世絵動物園」展(5/28まで)では、ウサギ、ネコ、タヌキなど、芳藤による擬人化された可愛らしい動物たちを紹介しています。 pic.twitter.com/e4p2TW5CQF
— 太田記念美術館 (@ukiyoeota) 2017年5月21日
猫が結構なキーポイントかもしれない。
師匠国芳の画塾にはたくさんの猫がいたそうです。
そうそう、この『おもちゃ絵芳藤』、
カバー装丁の擬猫化絵師のイラストもいいのですが、
カバーを外した装丁も赤地に金の猫絵で、渋カワです。
結構ポップかもしれない。
(なお、カバーを外したのは書店で紙カバーをかけてもらうのを忘れたから)
いい本でした。
折を見て再読したいです。